アルコール性肝障害
アルコール性肝障害の特徴
アルコールの影響によっておこる肝臓の病気はウィルスやそのほかの原因によって起こる肝臓の病気と比べていくつか特徴があります.
ひとつは,肝臓の腫れが目立つことです.肝臓に脂肪が蓄積されることや肝細胞自体の腫大によって肝臓が腫れます.
ふたつめにGOTの数値がGPTの数値より高くなるということがあります.これはアルコールによって肝臓だけでなく筋肉も障害を受けたことの現れといわれています. 筋肉のトランスアミナーゼはGOTが主で,GPTは少量しか含まれていませんので,アルコールによって筋肉が障害されると血液中のGOTが上昇するのです.
そして,これがアルコール性肝障害の特徴の最たるものといえることですが,γ-GTPの上昇が挙げられます.正常値は 40 単位以下ですが,アルコール性肝障害がある場合は,数百,数千単位と著しく上昇します.また飲酒量に比例して上昇しますので,その人の飲酒量をある程度判断できます.
他の特徴として,アルコール(お酒)をやめると病状が回復する(進行を抑える)ということが挙げらます.アルコール性脂肪肝は禁酒さえすれば1ヶ月程度で治ります.肝硬変の場合も,飲み続けた人に比べ禁酒した人は,2倍も五年生存率が高くなります. お酒の飲み過ぎで肝障害をおこした人は,程度に差はありますがアルコール依存症になっていることも考えられますので,肝臓の治療だけでなく精神的にお酒を克服する事が大切です.お酒を飲む事以外に楽しみを見つけることが良いでしょう.
また,仕事のおつきあいなどでどうしても飲む機会が多いという方も,なるべくウーロン茶など,ほかのアルコールを含まない飲み物などでごまかして肝臓をいたわりましょう. つきあい酒が原因で,「肝臓に障害が出て入院」なんてことになれば,そのおつきあい自体出来なくなることもあるのですから......
アルコールと肝臓の関係
お酒とのつきあい方
アルコールの飲み方について一般にいわれていることについて触れてみます.
よく「大酒を飲むと肝臓を悪くする」ということを耳にします.また「酒は百薬の長」と昔からいわれています. では,どれくらいが「大酒」でどのくらいなら「百薬の長」なのでしょうか?
ある報告に「一日 160g のアルコールを20年間飲み続けると肝硬変になる.」とあります.一日 160g というのは日本酒にして約8合の量を飲む計算になります. しかし,これはあくまでも目安で,肝臓へのアルコールの影響は,人種や,性別,個人による差が大きく「これだけだから大丈夫」とか「これだけ飲んだから絶対に肝臓病になる」というガイドラインはありません. 実際,大酒飲みでも肝臓に何の障害もない人もいます.
「肝臓を休める日(休肝日)」を決めて「休肝日はお酒を絶対飲まない」という人もよく見かけます.肝臓をいたわるという気持ちで「休肝日」を決めているのだと思います. その気持ちは大変よいことだといえますが,実は,肝臓の障害にもっとも関係するのは, 「一定の期間に摂取した(飲んだ)アルコール(お酒)の総量」 なのです.
ですから,いくら休肝日に飲まなくても,他の日に深酒をしてしまうとぜんぜん意味がありません. でも他の日に深酒や無茶飲みをしないのであれば,休肝日は無駄ではありません.最低,週に2日程度は設けた方がよいでしょう.
また「ウィスキーは度数が高いから肝臓に悪そうだけど,ビールは度数が低いから大丈夫.」ということもありません.こう誤解している方は意外に多いようですが,影響するのはあくまでも「アルコールの総摂取量」です.いくら度数が低いからと言って大量に飲んでしまえば同じ事です.
ちなみに,お酒を飲むときは良質のタンパク質を多く含む食品をつまみとして食べると良いようです.
肝臓での処理
身体の中の化学工場のところでもお話しましたが,アルコールは肝臓で処理されます.
アルコールは脳や筋肉,神経に多大な悪影響を与えるため,肝臓はアルコールを無害化(無毒化)しようと働きます.
まず最初に,体内に摂取されたアルコールはアルコール脱水素酵素や滑面小胞体,MEOS(メオス,ミクロゾームエタノール酸酵素)の働きにより,アセトアルデヒドという物質に変化します.
このアセトアルデヒドも人体にとって有害な物質で,肝細胞にも直接悪影響を及ぼし,この影響により肝細胞が死んで線維化が進むとされています.それと,吐き気を催すしたり,顔が赤くなったり,頭痛がしたりするのもこのアセトアルデヒドが血中に増えてくる事によって起こります.
アセトアルデヒドを分解する酵素(アセトアルデヒド脱水素酵素 ALDH)には,アセトアルデヒドの血中濃度が低いうちから働くもの(ALDH-II )と,高濃度にならなければ働かないもの(ALDH-I )があります.欧米人の約90%,日本人の約半数は両方の酵素を持っていますが,日本人の残りの約半数はALDH-II が欠損しているため,欧米人に比べお酒に弱い人が多いのです.
お酒は鍛えると強くなるという事も一般に言われていますね. これはアセトアルデヒドの分解にMEOSの関与が大きくなってくるからです.MEOSはアルコールの摂取量によって比例的に増えてきます.
これら酵素の働きによってアセトアルデヒドは無害な酢酸へと変えられていきます. そして,酢酸となったアルコールは体内で擬エネルギーとして消費され,二酸化炭素と水に変わり,体外に排出されます.
アルコール肝障害の例
アルコール性脂肪肝
肝細胞のなかに中性脂肪が溜まってくることです.アルコールも中性脂肪も,肝臓によって処理されているのですが,お酒飲みの場合,肝臓はアルコールの処理に忙しく追われて,中性脂肪の処理に手がまわらなくなってしまい,そのため中性脂肪が溜まってくるということになるのです.
アルコール性脂肪肝は無症状の人が多く,検診などで偶然肝機能異常を発見され,エコーや肝生検の検査をしてはじめてわかるということがあります. なかには「体のだるさ」や「食欲不振」などで診察を受けてわかる場合もあります.
アルコール性脂肪肝はアルコール性肝障害の中ではもっとも軽い病気で,短期間のうちに肝硬変に進行することもありません.
しかし,アルコール性脂肪肝と診断されたら,何をおいてもまず「禁酒」することです.無症状であることが多いため病気という意識が薄く,ついつい誘惑に負けて飲んでしまうということがあるかもしれません.
ですが,そのまま飲み続けると肝臓の線維化が進み,アルコール性肝硬変に進行したり,アルコール性肝炎を発症したりします.病気を進行させないために,とにかく「お酒をやめる」ことが必要です.アルコール性脂肪肝はお酒をやめれば1ヶ月程度で治癒します. (だからと言って「アルコール性脂肪肝くらいにならなってもいいや」などと不謹慎な考えで深酒するのは止めましょう.)
アルコール性肝線維症
肝臓組織の,特に中心静脈や肝細胞の周囲に細い線維がスジのように出来てくるものです.なぜ出来るのかは不明ですが,アルコールによる肝臓の炎症の名残りであるとか,アルコールは繊維の合成を刺激する作用があるといわれています. 脂肪肝と同じく自覚症状が少なく肝機能の異常の発見がきっかけでわかることが多い病気です.
急性アルコール性肝炎
お酒によって起こる肝障害の中で最も重篤なもので,普段からお酒を飲む習慣のある人が,大酒を飲んだ後に発病するものです.広範囲の肝細胞壊死が見られ,肝生検を行うと,肝細胞の脂肪化,風船様腫大,アルコール硝子体などの肝細胞の変性が見られます.
自覚症状は強く,身体のだるさ,吐き気,嘔吐,腹痛,食欲不振や発熱などを訴えます.また肝臓の腫大,黄疸,腹水などが認められ,重症の場合,意識障害,全身の出血傾向がみられます.
急性アルコール性肝炎は命に関わる病気ですので,直ちに医師の厳重な監視下で処置を受けなくてはなりません.
アルコール性肝硬変
他の原因による肝硬変と症状,検査データに大差はありませんが,ウィルス性肝硬変に比べ,肝臓の腫大,蜘蛛状血管腫や手掌紅斑などの皮膚病変が目立ちます.肝臓の組織ではアルコール性肝硬変に特徴的な病変が見られ,一つ一つの肝硬変結節が小さく繊維の幅が狭い「小結節性薄間質性肝硬変」の像を示します.(「ほげほげの像を示します」なんて言われても,病理写真を何枚と無く見てそれが何を意味しているのか解っている御医者さんならともかく,ふつー判りませんわね? ちなみに(ちなんでどーする)私も解りません)
病気の経過は他の肝硬変と大差ありませんが,アルコール性肝硬変は,飲酒をやめれば病気の進行が遅くなり,ある程度の回復が期待できる場合もあります.
アルコール肝障害の治療
とにかく,『禁酒』です.
アルコールが原因で肝臓を悪くするくらいお酒を飲む人は,アルコール依存症(というと言葉は柔らかいですが,アル中と同義です)になっている場合もあります.
本人の意思のみで禁酒できない場合は,家族の協力はもちろんのこと,精神科の医師の指導を受ける事も必要になるでしょう.断酒会とかそういう風な名前のグループもあるようですので,独りで断酒が辛いなら,そういうグループに参加してみるのも一つの手でしょう. (とにかく,身体を壊すくらいお酒を飲むのは,決して好ましいこととは思えません.私も肝炎発症するまではお酒は好きで飲んでましたけど,お酒が好きだったからこそ,楽しく飲んで欲しいなあと思いますわ.身体壊して楽しいなんてこと無いですもんね)