肝硬変

肝硬変へのプロセス

いろんな肝臓病の最終点と考えられている肝硬変は日本では約30万人の患者さんがいると推定されています.

肝硬変 とは,慢性肝炎などの肝障害によって破壊された肝細胞を修復しようとする作業である,肝細胞の再生と線維の増生の繰り返しによって,肝臓全体が硬くスジだらけになった状態 をいいます.

肝臓には約2500億個の肝細胞があり,その一つ一つの肝細胞の間は線維成分によって埋められています.肝細胞が何らかの理由で破壊されると,それを再生しようとする反応と,その傷口を線維成分によって埋めようとする反応が起こります.

肝細胞の破壊が一過性の場合は,この反応も一過性に終わりますが,慢性の肝疾患などのように,つぎつぎと肝細胞の破壊が進むと,傷口を塞いで,他の肝細胞へ影響が及ばないようにする反応(線維の増生)によって肝臓の線維化が進みます.

肝細胞があったところが線維成分によって占領されてしまうと,肝細胞の再生が妨げられ,わずかな隙間をぬって肝細胞が再生されるため,新しく再生される肝細胞は形も大きさもバラバラになります.

やがてその不規則な肝細胞の塊(肝再生結節)と線維成分が肝臓内の血液の流れを妨げるようになり,肝細胞は酸素不足や栄養不足になって壊死を起こすようになります.

そして 肝細胞破壊 → 肝再生・線維増生 が繰り返され肝硬変になってしまうのです.

代償性と非代償性

初期の肝硬変で,肝臓の働きが良く,自覚症状もほとんどない状態の肝硬変を,代償性肝硬変といいます.この時は正常に働ける肝細胞が肝臓の機能をなんとか保とうと働いてくれますので,特に自覚できる症状も出ないという特徴があります.

代償性肝硬変が進行し,肝臓の代償能力を超える,つまり,正常に働ける肝細胞が残り少なくなり正常な機能を保てない状態になると,【肝臓病の症状】の章で挙げたような,全身倦怠感,黄疸,腹壁静脈の怒張や食道静脈瘤,腹水,むくみなどの症状がでてきます. この時期を非代償性肝硬変といいます.

肝硬変の合併症

食道静脈瘤

肝臓には,門脈という,胃や腸,脾臓などで吸収された栄養分や,毒素などをふくむ血液を運ぶ血管と,肝動脈から血液が流れ込んでいますが,肝硬変になり線維化が進むと,肝臓内の血液の流れが阻害され,門脈内の血圧が上昇します.(これを門脈圧亢進といいます)

そこで腹壁の静脈や食道や胃などの細い血管がバイパスになり,そこに大量の血液が流れるようになります.そのバイパスとなった血管は本来血液量の少ない細い血管であるため,無理が生じて血管が膨らんで瘤のようなものが出来ます.それを静脈瘤といいます.

すべての静脈瘤が出血しやすいということはないので,すぐに大騒ぎすることはないのですが,発達の状態によっては,破裂して大量出血することがあります.静脈瘤の破裂による出血は,大量出血になりやすい上,肝硬変による,血小板やプロトロンビンの減少で血が止まりにくくなっていますので,危険な状態を招くことになります.

また,大量の出血により肝臓への血液量がますます減少し,肝不全を起こすということもあります.出血した血液が腸に流れ込むと血液に含まれるタンパク質からアンモニアがつくられ,それによって肝性脳症を引き起こすこともあります.

破裂の危険がある場合,手術や,内視鏡で見ながら静脈瘤の中やその周辺に薬剤を注射する,内視鏡的硬化療法によって治療を行います.

肝性脳症

劇症肝炎のところでも触れましたが,肝硬変の合併症としても肝性脳症が起こります.

肝性脳症の治療として,従来,緩下剤として使われていたラクツロースという薬が使われます.腸内の有害な細菌の増殖を抑え,アンモニアの吸収を低下させる作用があります. また,アミノレバンなどの分枝鎖アミノ酸製剤も使われます.

腹水

腹水が溜まる原因は門脈圧亢進と血液中のアルブミン濃度の低下と考えられています.

利尿薬を使う治療や,低下したアルブミン濃度を補うために,アルブミン剤の注射や,装置を使って腹水中のアルブミンを濃縮して,それを同じ患者さんの血液中に注射する 腹水濃縮再注入法,腹水を静脈に戻すバイパスをつくる手術(シャント術)などが行われています.

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LastModified: 2004-02-25T23:10:20+0900