肝臓病の検査
血液の検査 #1
【 】内は,正常値
血清酵素
- GOT (AST), GPT (ALT) 【GOT - 5〜35KU/ml,GPT - 5〜25KU/ml】
- GOTは Gutamic- Oxaloacetic Transaminase (グルタミン酸・オキザロ酢酸アミノ基転移酵素) の略で, 別名 AST [asparate aminotransferase (アスパラギン酸オキソグルタル酸アミノトランスフェラーゼ)], GPTは Gutamic- Pruvate Transaminase (グルタミン酸・ピルビン酸アミノ基転移酵素) の略で, 別名 ALT [alanine aminotransferase (アラニンオキソグルタル酸アミノトランスファラーゼ)] で, この二つは通称「トランスアミナーゼ(アミノ基転移酵素)」と呼ばれます. 肝細胞の細胞質中に存在する酵素で,アミノ酸の合成を促進する酵素です. 肝臓に異常がない状態でも血液中に少量存在しますが,肝細胞が何らかの原因により破壊されると細胞質中から血液中に流出します. その為血液中のトランスアミナーゼの量は壊された肝細胞の量に比例して高くなります. ただしGOTは肝細胞以外の細胞にも含まれるため,数値は他の疾患,たとえば心筋梗塞などでも高くなります. 急性肝炎ではどちらの値も高くなりますが,発症後,二,三ヶ月以内に正常値に戻ります. 慢性肝炎では,活動性,非活動性によって違いますが,活動性の場合200を超えることが多いようです. 劇症肝炎を起こすと急速に肝細胞が壊死するためどちらも1000を超えます.
- γ-GTP【40単位以下】
- ガンマ・グルタミル・トランスペプチターゼ は肝細胞膜と肝臓内の胆管にある酵素で胆管や胆嚢に障害があると血液中に増加してきます. この酵素は,アルコールの摂取量と密接な関係があり,アルコール性肝障害の人は高く,また,飲酒量の目安となります.
- ALP【0.8〜2.9KA単位(ベッシー・ローリー法),3〜10KA単位(キンド・キング法),男性98〜265KA単位 女性72〜199KA単位(P-NP法) 】
- アルカリフォスターゼ は肝臓の他,腸粘膜や骨などにも含まれる酵素で,胆道系に疾患があると血液中に増加します.また,妊娠時や骨の疾患の時にも増加します.正常人でも血液型がO型,B型の人は数値が高く,また食事の内容によっても検査結果が異なりますので,他の検査結果と併せて診断します.
- LDH【250〜350IU/L】
- Lactic dehydrogenase(乳酸脱水素酵素) は糖質をエネルギーに換える時働く,全身の臓器に含まれる酵素ですが,その由来する臓器によって,働きは同じでも性質が少しずつ異なります(これをアイソザイムといいます).GOT,GPTと同じく肝細胞壊死の時に血液中に増加しますが,心筋梗塞,腎不全,肺癌,大腸癌,血液疾患などでも増加します.肝臓の病気では急性肝炎や肝癌,特に転移性の肝癌で著しく増加します.
- ChE【0.6〜1.2ΔpH(フェノールレッド法),1900〜3800IU/l(ブチリルチオコリン法),1100〜1900IU/l(ベンゾイルコリン法)】
- コリンエステラーゼ は肝臓でつくられる酵素で,肝臓の機能が低下するとつくられる量も減少するため,血液中の値も低下します.しかし,肥満を伴う脂肪肝の場合は,値が高くなります.
- LAP【200以下(ゴールドバーグ・ルーテンブルグ法),30〜80IU/L(LPNA法)】
- ロイシンアミノペプチターゼは腎臓や膵臓などの臓器にも含まれる酵素ですが,胆汁中に多く含まれるため,胆汁の流れに問題があると検査値が上昇します.
血清タンパク
- 血清総タンパク[TP]【6.5〜8.0g/dl】 アルブミン・グロブリン比[A/G比]【1.7〜3.2】
- 血液中のタンパクを総称して総タンパク といい,アルブミン[albumin] とグロブリン[groblin] の二つに大きく分けられます. アルブミンは総タンパクの約55%を占め,肝臓だけでつくられますので,肝機能が低下すると減少します.100ml中3g以下になると腹水やむくみがでます. グロブリンはリンパ球や形質細胞でつくられ,肝臓に障害が出ると増加しますので,この二つの比率(A/G比)を調べることで,肝臓の状態を知ることが出来ます.
- 血清アルブミン[Alb] 【3.5〜4.2g/dl】
- 激症肝炎の様に肝細胞が急速に広範囲にわたり壊死したり,慢性肝炎や肝硬変で合成能が低下すると低くなります.肝障害の重症度を調べます.
- 血清タンパク分画 【アルブミン[Alb] 58.9〜71.8%, α1-グロブリン[α1-gl] 2.0〜3.9%, α2-グロブリン[α2-gl] 6.3〜10.6%, β-グロブリン[β-gl] 6.8〜10.6%, γ-グロブリン[γ-gl] 8.9-20.3%】
- 血清タンパクをアルブミンと4種のグロブリンとに分画しその比率を調べます.
脂質
- 血清総コレステロール[T-Cho]【120〜220mg/dl】
- コレステロールは食物からも摂取されますが,大部分は肝臓で合成されています.ですから肝機能が低下すると合成される量が減り,血液中の値も低くなります. しかし,胆汁の流れに障害がある場合は,胆汁中に排出することが出来ず,値は高くなります.
血清膠質反応
慢性肝炎,肝硬変などで肝臓に障害があるとγ-グロブリンが増加します.それを試薬を用いて調べる検査です.
- ZTT【2〜14クンケル単位】
- 血清に,硫酸亜鉛緩衝液という試薬を混ぜ,濁り具合を測定します. 血液中のグロブリンが多いほど検査値は高くなります.ZTTはγ-グロブリンを良く反映し,肝硬変などで高値を示します.
- TTT【0〜5クンケル単位】
- 血清に,チモール液という試薬を混ぜ,濁り具合を測定します. 血液中のグロブリンが多いほど検査値は高くなり,広範囲に慢性的な炎症があることを示します.
胆汁成分
- ビリルビン【総ビリルビン(T-Bil)0.2〜1.2mg/dL,抱合型(直接)ビリルビン(D-Bil)0.4mg/dL 以下,非抱合型(間接)ビリルビン(I-Bil)0.8mg/dL 以下】
- ビリルビンは寿命のつきた赤血球が,脾臓で壊される際にできる黄色い色素で (このときは,水に溶けにくい非抱合型(間接)ビリルビンといいます),アルブミンによって肝臓に運び込まれ,グルクロン酸と抱合されて水に溶けやすい抱合型(直接)ビリルビンにかえられてから,胆汁の中に排出されます. 肝機能低下や先天性異常によってグルクロン酸抱合に障害が出ると,血液中の処理されていない非抱合型ビリルビンが増加します. ビリルビン血液濃度が上昇し目や皮膚に沈着した状態が黄疸です.
血液凝固因子
- 血液凝固能検査(PT)【10〜12秒,80〜100%】
- PTはプロトロンビン時間 といわれるもので,血液が凝固するまでの時間を調べる検査です. プロトロンビンとは,出血を止める働きをする血液凝固因子で肝臓で合成されます.肝機能が低下してくるとプロトロンビンの合成能も減少し,血液が固まりにくくなります. 検査値は,凝固する時間をそのまま表す場合と正常値との比較を%で表す場合があります.
色素負荷試験
- ICG【10%以下(15分後値)】
- ICG(インドシアニングリーン)と呼ばれる緑色の色素を静脈から注射し,肝臓の色素排出機能,解毒機能を,一定時間後の残量によって調べます. 肝臓が正常であれば血液中のICGは処理されて胆汁中に排泄されます.