肝臓という臓器
肝臓とは
肝臓は身体で一番大きな臓器で,成人男性で約1,500g,成人女性で約1,200g位あります. 腹腔右上部の,肋骨,横隔膜の下に在り,約50万個の肝細胞の集団である肝小葉と呼ばれる六角柱の形をしたブロックが集まって形成されています.
肝小葉中心には中心静脈という静脈が走っています.肝小葉同士の間にはグリソン鞘と呼ばれる部位があり,そこを門脈,胆管,肝動脈の分枝が走っています.門脈は脾臓,膵臓,胆嚢,胃,腸からの静脈が流れてきている血管です.肝動脈は肝臓へ必要な酸素など運んでいます.門脈,肝動脈は肝小葉内で類同〔シヌノイド〕と呼ばれる毛細血管網になり中心動脈へと流れ,やがて肝静脈へ合流し心臓へと戻ります.肝臓を流れる血液の量は一日約2klにもなります.
沈黙の臓器
肝臓は『沈黙の臓器』といわれます.それは,肝臓がほかの臓器に比べて非常にタフで,知覚神経が内部にきていないため感覚が鈍く黙って重労働に耐えて働くこと,再生能力に優れること(極端な例を挙げれば,肝臓の75%を切り取っても約4ヶ月で元の大きさに戻るといわれます),代償能力に優れ かなりダメージを受けても残った正常な細胞が余分に働きそれをカバーして機能を維持しようとしていくところからそういわれています.(ですから少し異常があっても気づかないことがあるのです)
身体の中の化学工場
肝臓は身体の中の化学工場です.いろいろな物質を身体に必要な物へ,身体に有害な物を無害な物へと分解,合成しています.
代謝
糖の代謝
食物の糖質は腸からグルコース(ブドウ糖)として吸収され門脈を通り血液によって肝臓に運ばれます.肝臓ではグルコースをグリコーゲンという貯蔵できる形の糖に変えて肝臓に蓄えます.グルコースはエネルギー源として身体中に血液によって運ばれ消費されます(この血中のグルコース濃度が血糖値です).グルコースが消費され血糖値が下がると,肝臓で蓄えられたグリコーゲンがまたグルコースへと変えられ,血液により身体中へと運ばれるという仕組みです.
脂肪の代謝
腸管で吸収され,グリセリン,脂肪酸へと変化した脂質はリンパ管,門脈を通って肝臓へと運ばれ,身体が利用しやすいコレステロールやリン脂質,中性脂肪へと合成されます.
コレステロールは性ホルモン,下垂体ホルモン(副腎皮質ホルモン,性腺刺激ホルモン,成長ホルモンなど脳下垂体から分泌されるホルモン)の基になる物質で,これの代謝がうまく機能しないと身体せ簍々な影響が出ます.
中性脂肪の3〜5%は肝臓に蓄えられますが,肝機能の低下や飲み過ぎ食べ過ぎによりその代謝が追い付かないと,どんどん肝細胞内に蓄積されていきます.(これが脂肪肝[※1]です)
また,ビタミン,ミネラルも身体が利用しやすいよう貯蔵や活性化を肝臓で行っています.
蛋白・アミノ酸の代謝
アミノ酸を利用して多くの蛋白を合成しています.血液凝固因子やアルブミン(血液中の水分を保ったり水せ簣けない物質と結びついて身体の各部へ運搬する仕事をしています)などの血液中の蛋白の多くも肝臓で合成しています.アミノ基の転移や脱アミノというアミノ酸相互間の転移もしています.
解毒
おもに肝細胞内にあるミクロソームという部位のチトクロームP450という酵素によって,体内に侵入してきた有害物質や体内で発生した不要物質を,抱合,酸化,還元などをして,無害化して体外に排出します.薬は主にこのP450によって分解処理されます. ある程度以上大きな異物は,クッパー細胞によって処理されます.アンモニアなどがクッパー細胞によって処理されます.
アルコールの処理(解毒)も肝臓の仕事です.
アルコールは体外から入ってくる毒物の代表例です.アルコールには脳を麻痺させる作用があることが知られていますが,体内に長くとどまると有害な物質です.体に入ったアルコールは,まず,肝細胞内のアルコール脱水素酵素やMEOS (メオス,ミクロゾームエタノール酸酵素) と呼ばれるアルコール代謝系によってアセトアルデヒドという,血圧を上昇させたり吐き気の原因となったりする物質に分解されます.そのアセトアルデヒドをアセトアルデヒド脱水素酵素によって無害な酢酸に分解します.酢酸は,体内でエネルギー源として消費され,最終的には二酸化炭素と水に変わります. 風邪薬などの薬物も肝臓で処理(解毒)されます.
胆汁の生成と分泌
コレステロール,ビリルビン,リン脂質,胆汁酸を主成分とする胆汁は,一日約1l肝臓でつくられています.
胆汁の主成分である胆汁酸はコレステロールを酸化して作られ,脂肪を乳化して脂肪分解酵素を働きやすくし,脂肪の腸内での吸収を高める働きや,脂溶性ビタミン[※2]の吸収を助ける働きをします.
ビリルビンは赤血球に含まれるへモグロビンが変化して出来たものです.赤血球は約120日の寿命で壊れますが,その際,膵臓などにより分解される時に出来る黄色い色素です(胆汁色素).この段階でのビリルビンは水に溶け難い非抱合型ビリルビンといい,アルブミンと結び付いて血液に乗り肝臓へと運ばれます.非抱合型ビリルビンは肝細胞内でグルクロン酸と抱合されて水に溶け易い抱合型ビリルビンというビリルビンへと変化します.
これらビリルビン,胆汁酸は,コレステロールなど他の胆汁成分と肝細胞間にある毛細胆管により集められ,肝内胆管を通っていったん胆嚢に貯蔵され濃縮されます.
そして腸内で食物中のビタミンや脂肪などの消化吸収を手助けするために総胆管を介して十二指腸へと流されます.胆汁の一部は小腸から再吸収され門脈という血管を通って肝臓に戻り(腸管循環), 残りは腸内の細菌の働きによりウロビリノーゲンという茶褐色の物質に変化し,便に混ざって体外へと排泄されます.(便が黄色や茶褐色をしているのはこのためです)
また,胆汁は老廃物を体外への排泄する働きもしています