食事について

概要

肝臓病と一言で言っても,ご存知のとおりその症状には違いがあり,細かい点では症状に応じた食事を摂ることとなりますが,基本的には健常人と大きな違いはなく,また,糖尿病のように厳格な制限もありません. (ただしアルコールの摂取に関しては話は別で,基本的に御法度です.)

また,肝臓病には「高タンパク,高カロリー」が基本と言われていますが,何事も過ぎたるは及ばざるがごとしで,あまりに高カロリーを意識した食事を摂取すれば,脂肪肝,糖尿病などを誘発することになりかねません.

健常人と同じく1日3食,高タンパクを基本に各栄養素をバランス良く過不足無く摂ることを考え,肝臓病で不足しがちなビタミンを多く摂る様に心がければ良いでしょう.

なお,インスタント食品を代表とする添加物を多く含む食品は,それの解毒のため肝臓に負担をかけることになりますので,肝臓病ならずとも避けた方が良いことは言うまでもありません.

栄養素と,それを多く含む食品

タンパク質

タンパク質は細胞や,酵素,免疫などを生成する大事な栄養素で,肝細胞の再生を行う上でも必要です.肝臓病に良質のタンパク質の摂取が望ましいと言われるのはこのためです.

タンパク質はアミノ酸から形成され,アミノ酸には体内で合成できないアミノ酸と,体内で合成されるアミノ酸があり,前者を必須アミノ酸と言い,これは食物から摂取する以外ありません.

必須アミノ酸とは,イソロイシン,ロイシン,チロシン,リジン,バリン,フェニルアラニン,トリプトファン,メチオニン の8種(幼児の場合これにヒスチジン を加えた9種)を指し,これがどのくらいの割合どれだけ食物に含まれるかはタンパク価という数値で示され,これの高い物の代表は卵です.

必須アミノ酸は植物性タンパク質よりも動物性タンパク質に多く含まれます. かといって動物性タンパク(例えばお肉)ばかり食べれば良いかと言うとそうではなく,植物性タンパクには動物性タンパクに含まれないアミノ酸を含んでいますので,どちらのタンパク質もバランス良く摂ることが必要です.

主な食品

動物性タンパク質
鶏卵 鶏肉(皮無し胸肉,ささみ) 牛・豚肉(ヒレ肉,肩肉,赤身の部分) サンマ,イワシ,アジ,マグロ,タイ,蛎,エビ,ホタテ,サザエ等の魚介類, チーズ・ヨーグルト,牛乳等の乳製品.
植物性タンパク質
とうふ,納豆,豆乳等の大豆食品

糖質(炭水化物)

糖質は,体内でブドウ糖に変化しエネルギーとして消費されます.一部は肝臓でグリコーゲンに合成され肝臓のエネルギーとして利用,貯蔵されます.

また,糖質はタンパク質の利用を助ける働きがあり,タンパク価は,タンパク質だけの摂取より,糖質と併せての摂取の方が高くなります.

なお,糖質が不足するとエネルギーを補うためタンパク質が代替エネルギーとして利用されることになり,その場合,アンモニアの増加などの弊害が起こり肝臓せ箴計な負担をかけてしまうことになります.

主な食品

米を主体としたもの
ごはん,おもち,米菓(あられ,おせんべい等)など
小麦を主体としたもの
パン,スパゲティ,マカロニ,うどん,そば など
いも類
さつまいも,じゃがいも など

脂質

脂質は身体のエネルギーとして,脂溶性ビタミン(A,D,E,K)の吸収や各ホルモンの材料として必要な栄養素で,肝臓でコレステロール,中性脂肪,リン脂質などに換えられ,利用されます.脂質には動物性のものと植物性のものがあります.

コレステロールとは細胞膜や性ホルモン,副腎皮質ホルモン,胆汁酸の基となる物質で,これの不足は免疫の低下や成長の遅れなどの影響がでますので,これも人間には欠かすことの出来ないものです.

食物からの摂取がメインというイメージがありますが,実は肝臓で作られるものの方が多く,1日1.5g〜2g作られています.

コレステロールはアポタンパクという水溶性のタンパクに包まれて身体中に運ばれます. このコレステロールとタンパク質の複合粒子をリポタンパクといい,前述のLDLもリポタンパクの一つです.

リポタンパクには大きく分けて4種あり,カイロミクロンVLDL(超低比重リポタンパク)LDL(低比重リポタンパク)HDL(高比重リポタンパク)があります. 特に酸化や糖化などで変性したLDLは,マクロファージに取り込まれ血管壁に付着し,動脈硬化の原因となるため「悪玉コレステロール」,HDLはその余分に付着したLDLを回収する働きがあるので「善玉コレステロール」と呼ばれています.

脂質に含まれる脂肪酸には不飽和脂肪酸飽和脂肪酸があり,肉類,乳製品に多く含まれる飽和脂肪酸はLDLやVLDLの処理能力の低下をひき起こしたり,LDLに変化しやすいとされ,不飽和脂肪酸はコレステロールや中性脂肪を減らすとされています.

不飽和脂肪酸の代表的なものにはリノール酸,リノレン酸,アラキドン酸,オレイン酸,ドコサヘキサエン酸,エイコサペンタエン酸等があり,特に植物油に含まれるリノール酸,リノレン酸,アラキドン酸は必須脂肪酸と言われ,体内では生成できないため食物から摂取することが必要です.

主な食品

不飽和脂肪酸を多く含むもの
魚油 (ドコサヘキサエン酸,エイコサペンタエン酸を多く含む) べにばな油,なたね油,大豆油,オリーブ油などの植物油 (リノール酸,リノレン酸,アラキドン酸,オレイン酸を多く含む)
飽和脂肪酸を多く含むもの
バター,ラード,畜肉類,卵,バター,チーズ etc...

ビタミン

ビタミンはタンパクや糖質の代謝に必要不可欠で,その他にもさまざまな生命維持活動に関与しています.

肝臓病により肝機能が低下すると,ビタミンの貯蔵や活性化などの働きが低下するため,肝臓病患者はビタミン欠乏症になりがちですので,より多くビタミンを摂取することが重要です.

特にアルコールを飲む人は,ビタミンB1 がアルコールの分解せ鬻用されることからビタミンB1 ,B12 ,葉酸が不足しがちになり,またビタミンの活性化能力も低下していますので欠乏症にならないよう注意が必要です.

また,ビタミンCには体内でのインターフェロン増産に関与し,ウィルスに対する抵抗力を強める働きがありますので,ウィルス性肝炎の人は不足しないように摂取することが大事です.

ビタミンには,水に溶ける水溶性ビタミンと脂質に溶ける脂溶性ビタミンがあります. ビタミンA,D,E,Kは脂溶性のビタミンです.水溶性ビタミンのB類,Cは過剰に摂取しても尿中に排泄されますが,脂溶性ビタミンは肝臓や脂肪等の体細胞に蓄積されますので過剰摂取による弊害(肝障害,めまい等)もあります.

各ビタミン

書式
ビタミン名(脂溶性)or (水溶性)
  1. 1日の摂取量 / それを満たす食品例
  2. 主な働き・効果
  3. 欠乏による弊害(欠乏症)
  4. それを多く含む食品
A(脂溶性)
  1. 2000IU / 鶏レバー 4.3g
  2. 目・皮膚・毛髪の正常維持.骨の増強.免疫能増強による感染症予防,癌予防.
  3. 抵抗力の低下.夜盲症.口角炎.歯のエナメル質損失.
  4. うなぎ,色の濃い果物,レバー,緑黄色野菜,乳製品,肝油,脂の多い魚,卵
B1 [サイアシン](水溶性)
  1. 1.0mg / 豚ロース 145g
  2. ブドウ糖のエネルギー利用.アルコールの分解.神経の正常作用
  3. 神経痛,いらいら,むくみ,手足の痺れ,心臓病,糖尿病,癌,脚気
  4. 穀類,ナッツ,乳製品,豚肉,魚
B2 [リボフラビン](水溶性)
  1. 1.4mg / 牛レバー 40g
  2. 脂肪代謝促進.中性脂肪の減少.皮膚,神経の正常維持
  3. 口角炎,皮膚炎,舌の炎症
  4. 乳製品,緑黄色野菜,果物,ナッツ,豆類,麦
ニコチン酸[ナイアシン](水溶性)
  1. 17mg / 鰹節 38g
  2. 糖質・脂質・タンパクの代謝.皮膚の正常維持.脳神経の正常維持
  3. 下痢.皮膚症.鬱症,いらいら.
  4. 畜肉,鶏肉,レバー,ナッツ,魚,穀類,乳製品,豆類,じゃがいも,干しいたけ,ほうれん草,キャベツ
B6 [ピリドキシン](水溶性)
  1. 1.4mg / 鮭 203g
  2. ホルモンの産生.血液,皮膚,神経の正常維持.癌予防.
  3. 貧血.抵抗力低下
  4. 畜肉,肝油,,卵黄,鶏肉,ナッツ,野菜,魚
B12 [シアノコバラミン](水溶性)
  1. 1.5主 / しじみ 3.8g
  2. 赤血球の生成.タンパク質合成助長,促進.
  3. 貧血.
  4. レバー,酵母,畜肉,鶏肉
葉酸(水溶性)
  1. 400主 / 牛レバー 67g
  2. 細胞再生.赤血球生成.タンパク質合成助長,促進.
  3. 貧血.抵抗力低下.癌.食中毒.
  4. レバー,いちご,バナナ,レモン,ブロッコリー,キノコ,緑葉野菜,ナッツ,豆類,根菜
C [アスコルビン酸](水溶性)
  1. 40mg / レモン 111g
  2. インターフェロン産生促進,免疫力増強.コラーゲン生成.細胞の修復.鉄分の吸収助長.癌予防
  3. 壊血症,抵抗力低下,皮下出血
  4. 柑橘類,果物,野菜
D [コレカルシフェロール](脂溶性)
  1. 100UI / マグロ 48g
  2. 骨増強.カルシウム吸収,沈着増長.
  3. 骨粗鬆症,骨軟化症,筋無力症
  4. レバー,肝油,乳製品,卵,油の多い魚,バター,椎茸
E [トコフェロール](脂溶性)
  1. 10mg / アーモンド 32g
  2. 免疫力増強.赤血球生成.
  3. 肝臓病,糖尿病,更年期障害,癌,老化,高血圧,動脈硬化,不妊症
  4. うなぎ,ナッツ,緑葉野菜,穀類,植物油,卵,魚
K(脂溶性)
  1. 65主 / 緑茶 310g
  2. 血液凝固作用.骨増強.
  3. 出血傾向.骨軟化症.
  4. レバー,野菜,ナッツ

ミネラル

鉄,カルシウム,亜鉛,リン,マグネシウム等のミネラルも身体を維持するために必要不可欠な栄養素です. 例えば,鉄は赤血球,カルシウムは骨の素となりますし,亜鉛の不足は味覚異常に関与しています. ミネラルも忘れずに摂取する事が必要です.

主な食品

海藻類,果物,野菜.

症状別の注意点

脂肪肝での注意点

脂肪肝の原因にもアルコールや肥満やその他疾患からなどありますが,アルコールが原因の場合はアルコールを摂取しないようにすることです.

肥満や栄養の摂り過ぎで脂肪肝になってしまった場合は,一日の摂取総エネルギーを減らさなくてはなりません.

身長165cm の人は標準で1755kcalを必要としますが,肥満している場合,これよりも多くのエネルギーを摂取していたことになりますので,一日の摂取カロリーをこれよりも抑えなくては痩せられません. 一般に標準エネルギーから500kcal程度減算したエネルギーせ籤えると良いようです.

標準体重の計算法
標準体重 = (身長 cm - 100) × 0.9
標準エネルギーの計算法
標準エネルギー = (身長 cm - 100) × 0.9 × 30 kcal
栄養素 1gあたりのエネルギー
糖質 = 4kcal, タンパク質 = 4kcal, 脂質 = 9kcal

また,糖質,脂質の摂取を抑え,間食をしないようにする等,素材や食物自体の考慮や,揚げたり炒めたりするよりも,ゆでたり蒸したりする等,調理法にも考慮しましょう.

肝炎・肝硬変での注意点

肝炎の原因にもアルコールやウィルス,自己免疫性のモノなどありますが,アルコールが原因である場合は食生活からアルコールを排除する事です.

肝細胞の再生を助ける上で良質の蛋白質を多く摂る事が必要ですし,脂肪の代謝・吸収能力が衰えている為,脂質を抑えなくてはなりません.そのため,調理法にも気を配りましょう.

また腹水やむくみがある場合は塩分と水分の制限を行わなくてはなりませんし,アンモニア値が高い場合(肝性脳症などある場合)はタンパクの制限も行わなくてはなりません.

便秘はアンモニアの生成を増長しますので野菜をたくさんとって便秘にならないようにする事も大事です.

なお,この章のはじめにも触れましたがビタミンの貯蔵・利用能力が衰えている為,たくさんビタミンを摂取する事が必要です. 利胆作用があるとされるレモンをたくさん摂るのもよいでしょう.

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LastModified: 2004-02-25T23:15:52+0900