肝臓病の症状
症状の特徴
「体がだるい」という症状がありますが,これは肝炎など肝臓の病気に限らず,風邪をひいて熱がでたり,仕事で疲れた,という時にも良く見られる症状なのは御存じの通りで,他の疾病と紛らわしい,区別しにくいというところがあります. また,【肝臓という臓器 - 沈黙の臓器】でも触れましたように,肝臓は沈黙の臓器とも呼ばれ,ダメージを受けていようとも寡黙に働き続けますので,自覚できる症状が出にくいということも特徴です.
ですから,このような症状の時でも,「ただの風邪だ.」 とか「ちょっと仕事頑張りすぎたかな.」 とだけ考えずに,症状が続くようなら医師の診断を受けましょう.
主な症状の例
- 発熱・風邪に似た症状
- 急性肝炎の初期に発熱することがあります.同時にのどの痛み関節痛などを伴うこともあります.ひどい発熱(三十九度や,四十度)の場合,重症の肝炎を疑う必要があります.肝硬変も発熱を起こす病気ですが,肝硬変の熱は,三十八度以下のいわゆる微熱が多く,寒気を伴いません.肝臓の障害からくる発熱の時,「ただの風邪だ.」と素人判断をして風邪薬などを飲んでしまうと,逆に肝臓に負担をかける結果となってしまいますので,医師の診断を受けることをおすすめします.
- 吐き気・嘔吐
- 胃炎や胃潰瘍などの胃の疾患,二日酔いなどの時にも見られる症状ですが,肝炎の症状で,食べ物のにおいをかいだだけで吐いてしまった,というようなこともあります.
- 体のだるさ
- 「寝ていても起きていても,持って行き場のないほど体がだるい.」という症状があります.これは肝炎になった人でないと解らないだるさです.
- 腹痛
- 腹痛を起こす症例は少ないのですが,まれに急性肝炎で腹痛を訴えることがあります.
- 腹部が張る
- 肝硬変で腹水が溜まるとお腹が張ります.重症の急性肝炎でも腹水が溜まります.腹水が溜まるということは,肝臓の機能が低下していることの現れです.
- 右脇腹の圧迫感
- 肝臓の腫大がある時,それによる圧迫感を感じることがあります.
- こむら返ししやすくなる
- 肝臓はミネラル・ビタミンの代謝にも大きく関与していますが,この機能が低下する為こむら返しを起こしやすくなることがあります.
- 月経異常
- 肝臓のホルモン処理能力の減少により月経異常を起こすことがあります.
- 皮膚の痒み
- 黄疸が出ている時,全身に痒みを感じることがあります.これは血中に胆汁量が増加し,その成分の胆汁酸が原因です.
- 白色便が出る
- 急性肝炎時の黄疸の症状がある時や閉塞性黄疸がある時,十二指腸へ排泄される筈の胆汁がうまく排泄されていないため,便の色が薄くなり白っぽくなります.
- 尿が濃い茶褐色になる
- 胆汁成分のビリルビンが大量に尿中に含まれる様になり,尿がビール瓶の様な濃い茶褐色になります.黄疸の出る前兆として目安となります.
- 吐血・下血
- 血を吐いたり,コールタールのような黒い便(タール便といいます.)を出したりという症状が肝硬変の患者さんにみられます.食道静脈瘤の破裂(吐血)や胃の粘膜のただれによる出血(タール便)によってこういう症状がでます.食道静脈瘤については後に述べます.
- 黄疸
- 肝臓の機能が悪くなったり,胆汁の流れがつまったりすると,目や皮膚が黄色くなります.黄疸とは,赤血球の中の血色素であるヘモグロビンからつくられるビリルビンという色素が皮膚や目の結膜や強膜(目の白目の部分)に沈着することです.黄疸がでるのは,肝臓や胆道に重大な病気があることの現れで,肝臓病以外では,胆石症などの胆道系の病気でも黄疸になります. まちがえやすいものにカロチン黄疸(若しくは柑皮症)というものがあります.これは,カロチンを多く含むミカンやカボチャを大量に食べたときになります.肝臓の病気には関係なく,検査を受けても肝機能は正常で,ビリルビンの増加はありません.手のひらや足の裏が黄色くなりますが,目は黄色くなりません.
- 手掌紅斑
- 手のひらの,親指と小指の付け根の膨らんだ部分が,ピンクがかったきれいな赤色になります.手のひらの真ん中の方は赤くなりません.女性ホルモンであるエストロゲンの肝臓での処理に障害が出ることに関与していて,エストロゲンの末梢血管拡張作用による症状です.
- 蜘蛛状血管腫
- 上半身の皮膚に蜘蛛の形のような,細い血管が浮き出したものです.肝硬変の人や,肝硬変でなくても大酒を飲んだ後などにみられます.
- 毛細血管拡張
- 鼻の頭や頬が赤い,いわゆる『酒ヤケ』といわれるものです.肝硬変の人に見られます.
- 腹部の静脈怒張
- お腹から胸にかけて血管が浮き出るもの.『メデューサの頭』と呼ばれる,へその周りに放射状に血管が拡張する症状もその中の一つです. 肝硬変で肝臓に流れにくくなった血流が,バイパスを求めてほかの血管へ流れるために生じます.
- 女性化乳房
- 男性肝硬変患者で乳腺が膨らんできて女性のような乳房になることがあります.これも肝機能の低下により,女性ホルモンであるエストロゲンの処理が十分に行われなくなることによって起こるといわれています.
- 意識障害
- 劇症肝炎や重い肝硬変の人は,肝機能の低下により,体の外へ排出されるはずの有害物質や老廃物(アンモニアやある種のアミノ酸,分子量の小さな脂肪酸)などが血液中に溜まってきて,意識障害(肝性脳症といいます.)を起こすことがあります.これは,ちょっとぼんやりしている程度の軽度のものから,呼んでも返事がない(肝性昏睡)重度のものまで程度の差があります.
- 羽ばたき振戦
- 劇症肝炎や重い肝硬変の人は上記のように意識障害を起こしますが,それが重くなり昏睡に陥る前に鳥が羽ばたくような手の振えが見られることがあります.
- その他の症状
- 上記の他に
- 性欲減衰
- 酒量の減少(急にお酒に弱くなる)
- 皮膚のシミが増える.顔がどす黒くなる
- ガスが溜り腹部が張る
いずれにせよ素人判断は禁物です.異常を感じたら直ぐ医師に診断してもらいましょう.